luxのメダロットブログ

ダメージ計算検証ほか

競技性のあるロボトルとは(+提言)

 

この記事の概要

この記事は、ロボトルのゲームバランス(ロボトルの競技性)についての私の考えを整理したものです。 ロボトルの競技性を定義し、メダロットSとメダロット9、メダロット2の間で比較しています。

記事中にも書いていますが、競技性の高い/低いをもって、その作品を良い/悪いと言うものではありません。 競技性はいい作品のためのいち要素となりえるものの、必須ではないとの立場です。 しかし、メダロット9で一度競技性の隆盛を迎えたゲームシリーズですので、メダロットSのエコシステム(パーツ入手機会をガチャ要素・課金要素とするエコシステム)ではできない事情があるとしても、今後のコンシューマ版ではきちんと高い競技性を継承してほしいです。

また図らずも良い対戦ゲームとは何かを論じているので、メダロットに関係なく読んでいただける内容になっていると思います。

この記事を書くにあたって、一般的に競技性がどう定義されるか、どうすることで比較可能な状態にできるかといったことを調べて取り組みました。 たびたびe-sports系の記事がヒットしたため、部分的にその考え方を取り入れています。

またこの記事は2月ごろからずっといつか書こうと思っていたテーマで、例のごとくとても長くなりました。 約13,000字あり、読むのに約30分掛かりますが、エッセンスは概要にある通りです。 この記事は、お披露目の前に最低2回は完全に書き直しています。 この版でのお披露目となりましたが、今後さらに理解が進んだ結果、考え方が変わることがあり得ます。

 

この記事を書くに至った背景

巷ではたびたびメダロットSのゲームバランスは悪い、メダロット9のバランスは良いなどといった表現がなされます。 メダロットSを日々プレイし、およそすべてのゲーム版メダロットに触れた経験から、ロボトルの競技性についての私の考えを整理するために記事を書くことにしました。

 

前提の整理

本題に入る前に、議論の前提を整理します。 この記事では、ゲームメダロットを「(メダロッターの)成長」、「(メダロット、メダルの)育成」、「(他プレイヤとの)対戦」、「(パーツ、メダルの)収集」といった要素を持つポケモンフォロワーRPGゲームと見ています*。 本記事で取り扱うロボトルの競技性は、これらのうち対戦にかかわるものです。 作品の奥深さを表現するために対戦の要素を作りこむことは、このジャンルにおいてたびたび取られている手段です**。 また他の要素(成長育成収集、ほか)もより深く掘ることができますが、この記事では必要以上には取り扱いません。

* 成長RPG要素ですし、RPGゲームに育成対戦収集要素を持ってきた第一人者的作品はポケモンです。
** 大人のためのポケモン講座(2ページ目)からの引用: ポケモンの奥の深さは育成対戦に集約されます。

対戦はあくまでゲームのいち要素でしかない。 メダロットデザイン、メダロットのゲームシナリオ、世界観なども、十分に深掘りして論じる価値がある。

allabout.co.jp

 

本記事では、メダロットSメダロット9メダロット8,9の代表として)、メダロット2(初代メダロット~5,DS,7,Rの代表として)を取り上げます。 メダロットSは、オンラインエキシビジョン::フラットマッチ::あいことばでの競技性である点に注意です。 メダリーグやレベルクラスマッチ、誰とでもマッチング、シナリオモードなどではありません。

  • メダリーグ: ゴーストデータとのロボトルであり、またptを貯めて上位報酬の獲得することも競技に含まれるので、対象外にしています。 前者について、相手はローテに従うため、ターゲティングがメダル性格に左右されるようになっています(機械的ランダム要素でありながら疑似的な人的ランダム要素;用語の定義はいずれも後述)。 相手の攻撃先を読む代わりとして、ターゲット管理の知識(技能)を問われる競技性になっています。 戦術的には、レベルクラスマッチ同様、最速フラッシュサクリファイスのようなものが強いです。 後者については、1戦1戦の勝敗(勝率)よりも、積み重ねたptの高さ(掛けた時間)を重視するものになっており、Time to Win(時間をかけたもの勝ち)の競技性になっています。 そして掛けた時間の長さは技能の優劣とは異なります。
  • レベルクラスマッチ・ノーマルマッチ: 原理的に最も自由なレギュレーションです(フラットマッチはレベルが均一化される、ある種の縛りレギュレーションです)。 最速フラッシュサクリファイスなど、対応や対策を行うことができない、または困難な極端に強い戦術があるため、競技性はフラットマッチよりも低いでしょう。 たびたびフラットマッチの対戦会大会が開催されている一方で、レベルクラスマッチ・ノーマルマッチにはあまり見られません。
  • 誰とでも: 早く負けて効率よくダストルビーを得たいプレイヤ(試合をしない)や、パーツチューンナップのために参加するプレイヤ(人的ランダム要素を狭めている)の影響が無視できないため、対象外にしています。
  • シナリオモード、超襲来!ロボトルなどのイベントロボトル: ゲーム開発者が考えた構成とのロボトルであり、のちに説明する対戦ゲームの競技性の定義から外れます。

 

対戦ゲームの競技性とは

いったんメダロット・ロボトルから離れて、対戦ゲームの競技性に触れます。 まず競技性という言葉は、辞典やwikipediaには乗っていません。 e-sports関連記事で定義を試みているものがいくらかあったので、それをもとに定義します。 キーワードとしてプレイヤの技能人的ランダム要素機械的ランダム要素という3要素が出てきますので注目してご覧ください。

e-sports界隈では「ゲームがスポーツになり得るのか」という問題提起に応えるべく競技性と向き合っている方が多いようです*。 ざっと目を通した中でe-sportsとゲーム大会の違いという記事の定義や、再度e-sportsの競技性について思考運と競技性について(草稿)というメモの記述に腹落ちしたので、それぞれを引用し、整理、定義しました。

* ゲームは一般的に「単なる娯楽・遊び」とみなされがちだが、「競技性のある『eスポーツ』はスポーツ活動と見なすことができ、関係する選手は伝統的なスポーツ競技の選手と同等のレベルで準備やトレーニングに打ち込んでいる」(eスポーツ(wikipedia)からの引用)など、オリンピックでの競技採用に向け議論がされているそう。

note.com

ja.wikipedia.org

 

「競技性」とは
  • プレイヤの技能機械的ランダム要素人的ランダム要素の3要素で成り立つもの。
  • プレイヤの技能
    • 知識、経験、ランダム要素(人的・機械的ランダム要素のこと)のリスクコントロール技術といった、準備やトレーニングによって得られる能力のこと。
  • 機械的ランダム要素
    • ランダム要素のうち、プレイヤに起因しないもの。 運のこと。 たとえば、ビンゴゲームで出てくる数字やサイコロの出目。 ロボトルであれば、狙い機体(ランダムに決まる作品の場合)、狙いパーツ、貫通先パーツ、かすり、クリティカルなど。
  • 人的ランダム要素
    • ランダム要素のうち、プレイヤに起因するもの。 プレイヤが取ることができる戦術のこと。 たとえば、じゃんけんであればグー・チョキ・パーの3手。 ロボトルであれば戦術のこと。
    • 対戦相手を研究し、人的ランダム要素(戦術)に"当たり"をつけることも技能に含まれる。 例: luxは不沈戦艦戦術が好き(【超ロボトル祭S】私的ロボトル戦術論と競技者変遷)。
「競技性がある」とは
  • 複数のプレイヤ同士で勝敗を競うこと。
    • ストーリーモードや超襲来!ロボトルといった運営が用意した相手としか勝負できない場合には、対戦ゲームとしての競技性はない。 メダリーグのゴーストデータは、プレイヤのデータを基にしているため、複数プレイヤで勝敗を競うもの、競技性があると考えてよい。
  • プレイヤの技能が勝敗に反映されること。
    • =パーツスペックの優劣を競うことではない。
    • 機械的ランダム要素(運)の良さを競うことではない。
  • ゲームに機械的ランダム要素(運)があること、またはすべての手が研究されていないこと。
    • これらがない場合、必勝法が見つかっていることになる。
    • 運要素がなくすべての手が研究されていない例としては囲碁、将棋など。 現時点では人的ランダム要素(戦術)は様々あるが、すべて研究された場合に、いかに必勝ルートを選べるかというものになってしまい、人的ランダム要素(戦術)が消滅する。
  • 人的ランダム要素(戦術)に対して、プレイヤは対応や対策がとれること。 つまり、必勝法となる戦術や極端に強い戦術がなく、互いにメタの関係にあること。
必勝法となる戦術や極端に強い戦術の例
  • ライトニングリロード(メダロット7): 極端に強い戦術の例。 いったん発動してしまえば相手に何も(コマンド入力さえ)させなくできる。 利用にあたってはフルチャージパーツとメダルが固定されるだけで構成の自由度も高い(クソメダ列伝~メダロット7編~参照;メカデスペラードさん)。
  • 腕ディスターバンス(メダロットS): メタがいびつな例。 ディスターバンスは非攻撃スキルを完全に無効にすることができる(トラップクリアはバランス調整で働くようになった)が、サイドキッキーの左腕は脚部特性トラップバスターや(頭部パーツ限の)トラップクリアの回数を超える設置が可能。 また頭部パーツ限であったディスターバンスが腕でも使えるようになったため、ディスターバンスのために頭部選択を犠牲にすることもなくなった。
  • ファーストエイド(メダロットS): 非常に強い技の例。 プラント系の技でもっとも有効とされる。 コマンドライン到達時にパーツ復活する効果を初回設置時に5個置ける。 除去できるプラントクリアは現在のところ頭部パーツ・変形後にしかなく、貴重な頭部枠をそれで埋めることが避けられる傾向からも、非常に有効な技となっている。
  • イリュージョン・メダフォース戦術(メダロットS): 非常に強い戦術の例。 コンシューマ版との差が大きいので紹介する。 過去作でのチャージはコマンドライン待機で回避不能となるのと異なり、メダロットSでは回避不能ペナルティが付かないチャージができる。 フラットマッチでは通常攻撃でのダメージが比較的伸びないこともあり、低リスクでありながら大きな恩恵(メダフォース発動、CG依存技)が得られる。 対策としてはアンチCGやオーバーチャージなどになるが、脚部特性イリュージョンをもつ機体でメダフォース戦術をされた場合、ターゲットにすることができない(レーダーサイト系の技が必要)。 またメダロットSのイリュージョンは、チャージのたびにステルス効果が付くため、ステルスパーツ(頭部パーツ限)を装備する意味がなくなり、代わり頭部に強力なCG依存パーツ(ゴースト、ハイパービームなど)を装備するのが定石になった。メダロット9のイリュージョンはCG100%到達時の一回のみステルス効果が付く。
  • トルネードアンチエア戦術(メダロットS、メダロット9など): 非常に強い戦術の例。 マイナス症状トルネード中にアンチエアを入れて大ダメージを与える戦術。 メダロットSにおいては、スーパーアーマーを装備するか、ぼうがいクリアを適宜入れるなどして対策し続ける必要がある。 メダロット9では、それらに加えてアンチアンチエアや停止無効メダリアを装備することで、相手にその対策がバレることなく対策ができる。
  • 高速フラッシュサクリファイス戦術(メダロットS): メダリーグなどで見られる頻出戦術。 初手でフラッシュを入れ、防御・回避不能となった機体を、続く別の機体のサクリファイスで仕留める戦術。 フラッシュは、冷却時ペナルティが防御・回避不能とはいえ、素の成功値が高くランクボーナスで充填値も高いため好まれる。 防御側は回避かかすりかをしないと防御・回避不能状態となってしまい、続くサクリファイスをクリティカルで受けることになってしまう。 後述する速攻陣形&CF戦術に近い流れだが、初手を受けると確定クリティカルとなり、より強力である。 また速攻陣形&CF戦術よりも取れる対抗策に乏しい点からも頻出戦術となることに不思議がない。
  • 速攻陣形&CF戦術(メダロット9): 強い戦術の例。 同作でもっとも有能なリーダー効果のひとつ速攻陣形と、連続で攻撃を畳み込むCFを組み合わせたもの。 初手の準備時間を2/3に短縮すること(速攻陣形)で、望んだ行動(CF)を成立させやすくなる。 リーダーが読まれにくいのも強い。 一方相手は、一太刀見切りで行動を失敗させる、速攻陣形ガード、リバース耐久構成などの複数の対策を組むことができるようになっている。 また、速攻陣形&CF戦術では使われるパーツが定まってくるため、初見で戦術が読まれやすい。

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「競技性が高い」とは
  • 人的ランダム要素(戦術)が多いこと
    • メダロット9は、単なるパーツスペックに頼った戦術のみでなく、パーツ、メダル、メダリア、チーム内の別メダロット間のシナジーのある組み合わせでも戦術を生み出せる。 体系化して記事にしたかったが、それが叶わないほど様々な戦術がある。 べるくすさんブログ青色らとさんブログなどが詳しい。
    • 戦術が多いことは、新規参入者が習得する際に必要な習得時間が長いことでもある。
  • ランダム要素(機械的、人的とも)が公平であること
    • 機械的ランダム要素(運)が不公平である例:
      • こちらの攻撃は回避・かすりばかりで、相手の攻撃はヒット・クリティカルばかりという状況。
    • 人的ランダム要素(取ることのできる戦術)が不公平である例:
      • メダロットSで顕著。 プレイヤ間で使える戦術の種類や数、戦力に差があり、差を埋める手段がないこと。 入手期間の限られるパーツ・メダル・メダロッターも多い。
      • メダロット9、ガールズミッションにおいて、カブト版ではクワガタメダルが使えない(逆も然り)。
  • 機械的ランダム要素(運)が勝敗に反映されないこと、または反映されずらいこと
    • 狙い機体(ランダムに決まる作品の場合)、狙いパーツ、貫通先パーツ、かすり、クリティカルなど。
機械的ランダム要素(運)が勝敗を支配している例
  • 狙いパーツで受ける仕様(メダロットS):  競技性を破壊しかねないメダロットS独自仕様。 横一閃、ソニックショットなどで相手頭部パーツに照準が付いていれば、その機体に腕や脚が残っていてもたいてい倒せることを意味する。 ガード可能であるものの、アサッシンやサクリファイスの通常武器についても同様。
  • えんかくじらい3(メダロット4など): 90%の確率で相手機体を破壊できる。 失敗すると自機体が破壊される。 ただの運ゲー
  • メダロットS)コンフュージョン、(メダロット4など)こんらん、パニック: コマンド入力がランダムで決められてしまう効果であるため、人的ランダム要素(戦術)機械的ランダム要素(運)に変わることになる。 使われた側も使った側も運ゲーに突入することになる。

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各シリーズのロボトルの競技性

競技性を上記のように定義したうえで各シリーズ間で比較しました。 数値化まではできなかったので「大中小」という表現を用いました。 競技性が最も高いと評価できる組み合わせは、(技能、人的、機械的)=(大、大、小)となる組み合わせです。

私見でまとめていますが、luxに任せず自ら評点をつけて比較してみるのもいいと思います。

メダロットSの競技性: 中

途中申した通り、メダロットSは楽しくない育成要素を重視した作品であり、対戦要素は軽視されているように見えます。

  • プレイヤの技能: 中
    • 相手のステータスは丸見え、強化された数値は強調表示されており、これらに対する知識や読みは必要ない。 また強化されたパーツから戦術を予想できるようになっている。
    • 補記: メダロットSがステータスを可能な限り出している理由は、強いパーツを得さえすれば(プレイヤの技能によらず)ロボトルに勝てるというゲームにすることで、パーツを得る射幸心を煽りたかったためと考えています。 インフレも同じで、ガチャエコシステムであることの弊害ですね。
    • 行動選択に与えられた時間はシリーズ中で最短のため、即応性(技能)が求められる。 即応性と言い換えた技術についてはメダリーガー向けフラットマッチ入門書②さいむぉんさん)が詳しい。
    • ダメージ計算式(矢さんブログ)や充冷計算ツール(まばさんツール )の確立とともに、理論立てて戦術を組めるようになってきた(技能)。
    • 補記:メダロットSの対戦会・大会で優勝常連でいらっしゃるさいむぉんさんは、各計算式の使いこなしはもちろん、ランダム要素のコントロール技術(症状が通るかどうかを藤 功さんデータを利用して確率的に扱っている)にも秀でているとたびたび感心します。
  • 人的ランダム要素(戦術): 小~中
    • パーツやメダロッターは、メンテナンスを経る度にインフレしている。
    • 技や脚部特性自体にも上位・下位互換が存在する。 今後、新規デザイン機体の技・脚部特性として、下位互換にあたるガトリング、ファイア、Gローダーなどが登場することはなさそうである。
    • イベント再録がないことからプレイヤ間の所有差が大きく、また埋める手段も乏しい。 同様に、ガチャ運の良さ・課金額が人的ランダム要素(戦術)を左右している(ガチャの辛さと向き合う)。
    • これらのインフレ、所有差拡大、そして狙われたパーツで受ける仕様のため、将来、競技が破壊される可能性がある。
  • 機械的ランダム要素(運): 中~大
    • 頭部を狙われたときに頭部で受ける仕様のため、シリーズ中で最も運ゲーに近い。 極端に言うと、ソニックショットや横一閃で頭部狙いを引けるかどうかの運ゲーになっている。 競技を破壊する可能性がある。

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メダロット9の競技性: 大

メダロット9は、対戦ゲームとしていいものを作りたいと意識されたゲーム作りがなされています。 収集:過去作ラスボスのパーツなどは意外とかんたんに手に入ります。 育成:メダリアはスキル不足を補うこともできます。 対戦のために収集育成要素を縮小させていることが分かります。

  • プレイヤの技能: 大
    • 相手の構成は、装備しているパーツと装甲値のみしかわからない(ロボトル対人戦では相手ステータスを見ることができない。装甲は攻撃時に分かる)。 そのためどういった特徴のパーツか(威力はどの程度か、サブスキルは何であったか)の知識、どういった強化がされているか、メダルやメダリア、リーダー効果は何かを読むといった様々な技能を問われる。
    • 補記:メダロット9では、技能の中でも読みの比重が高いようで、ベテランプレイヤでも勝率7割が良いところだそうです。 バショーさんの発言べるくすさんの発言に依る。
  • 人的ランダム要素(戦術): 大
  • 機械的ランダム要素(運): 小
    • 攻撃側が狙う機体、防御側が受ける部位は選択可能であるなど、運要素はシリーズ中最少である。
    • また回避率は目視可能であり、リスクをコントロールすること自体も技能に含まれる。 つまりその回避率に賭けるか、当たった時のリスクを恐れて腕で守るかを選択することも技能である。

 

メダロット2の競技性: 小

メダロット2は黎明期であり、単なるポケモンフォロワーから独自ブランド化する過程にあったため世界観キャラクロボットデザイン、そして収集要素の作り込みを重視していたようです。 世界観に没頭しつつシナリオを攻略し、キャラを愛で、パーツの収集に明け暮れるのを楽しむ作品です。

  • プレイヤの技能: 小
    • メダロットSより公開されているステータスは少ないものの、人的ランダム要素(戦術)の幅が小さく、常用されるパーツが決まってくるため、深く広い知識を求められているような競技性とは言えない。 しいて言えば、優秀なパーツを必要数集められたかを競う競技性である。
    • パーツスペックが勝敗を支配しすぎであり、ロボトル対人戦を考慮していると考えづらいバランスである。
  • 人的ランダム要素(戦術): 小
  • 機械的ランダム要素(運): 中
    • 残装甲の高いパーツで受ける仕様のためメダロットSよりは運要素が少ないものの、運で決着が着くことが度々ある。

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いい作品に競技性は必要か

メダロット2の事例

メダロット9がシリーズ中最大の競技性であるだろうことは説明したとおりです。 一方で、ゲーム作品の成功において競技性が必要かはもう少し考えていいと思っています。 なぜなら競技性においては最小であるものの、シリーズ中最大のセールスはメダロット2(40万本超)であり、これは以降メダロット5まで続くナンバリングを生んだためです。

当時は流れに乗っていました。 ポケモン赤緑(1996年)の大ブームからポケモンフォロワーゲームが多数販売され、初代メダロット(1997年)やメダロット2(1999年)もその流れの中にありました。 さらにメディアミックス展開もされていて、漫画(コミックボンボン)・アニメ・ゲームを同時展開するなど、話題性もメディア露出も高かったです。

また冒頭で話した通り、ゲームメダロットポケモンフォロワーRPGゲームですので対戦以外の要素もあります。 お友達ロボットが日常にいる世界観が好きな方も、ロボットデザインが好きな方、平野佳菜さんシナリオが好きな方もいらっしゃいます。 そしてむしろ、対戦が好きな方より多数派でしょう。 競技性が高いことは、習得にかかる時間が長くなる=シナリオクリア難度が高くなることですから、そういった方々がゲームを楽しむことができずに遠ざける要因になりかねません。

折衷案として、せめてシナリオクリアまでは、優秀なパーツやメダルのレベルに頼って進めることができるほうが望ましいでしょう*。 ただ競技性の高さは、その後のやりこみ要素や隠し要素攻略、対戦のために持っておいてほしいのです。 これは商業的成功には直結しづらいかもしれませんが、ずっと続けてゲームをしてくれる強固なファンを形成することができるのです。 競技性の高いメダロット9は、いまだに対戦会大会が開かれる作品になっています。

* 大人のためのポケモン講座(2ページ目)からの引用: ただストーリーをクリアするだけなら、それほどこだわらずとも楽しむことができます。しかし他のユーザーとのポケモン対戦で勝つために「どういう風にポケモンを育てるか」、こうなると途端に奥深い世界が広がり、ポケモンの真髄が顔を覗かせるのです。
* メダロット9においては、システムへの深い理解がなくてもゲームを進められるよう、エンカウント敵は2体、イベント戦(敵3体)の一部は負けても問題ない、メダリアを合成しなくてもシナリオクリアできる程度の難度であるなどの工夫がなされていました。

 

メダロットSの事例

現在メダロットSは商業的成功を収め、かつてのメダロットファンを振り向かせるには十分な働きをしたと思います。 100万DLを早々に達成したり、新機体が毎月のようにリリースされたり、メダTuber活動が始まったりなどがあるためです。 その点、競技に容易に入っていける調整にしたことは評価できます。 つまりメダロット2~4(イッキ編)への回帰です。 具体的にはディフェンスパーツセレクトをやめたこと、コンボやCFをやめたこと、メダリアをやめたことといったロボトルの簡素化と、シャトルラン形式に戻したこと、ティンペット意匠を戻したことなど見た目にかかわる点で、かつてのファンを呼び戻す大きな役割を果たし、また手軽にロボットバトルができるゲーム性になったと思っています。 はじめから平野さんのシナリオであればより良かったですが。

gamebiz.jp

 

一方で、対戦ロボトルの競技性)については軽視されていたと思っています。 これは、ポケモンフォロワーゲームの別の要素である育成が重要化されたこと(パーツ育成が加わった)、パラレルデウス(ソウルメダル)がはじめプレイアブル化されることを想定されていない調整であったこと*、ロボトルシステムが異なるにもかかわらずパーツステータスがメダロット9の定数倍を基本にしていることから、そのように考えています。 パーツ育成が難しく、それ自体が目標にされている点から、ミッションを繰り返してパーツを育て、ゲーム中に準備された難敵を倒すゲームにしたかったのではないかと思っています。 またメダリーグも、運営では準備しきれなかった難敵をゴーストデータに求めた姿勢の表れだったのだと思っています。 なお、そういった難敵を倒すゲームにしたい姿勢は、のちの超襲来!ロボトルや進撃!ロボトルでも見られます。 この点については、私はメダロット7以降で見られたジャイアントロボトルのようなレイドバトルが欲しいです。

また私見ですが、育成が重視され対戦が軽視されたメダロットのゲームを楽しいとは思いません。 逆のほうが嬉しいです。

* コンシューマ版でもラスボスが非プレイアブルである例はいくらかあります。 たとえばメダロット9でも、3vs1のレギュレーションとはいえ、メダルイーターは非プレイアブルです。

のちにオンラインエキシビジョンのサービスも開始しました。 とくにフラットマッチについては一定の競技性があり、対戦を楽しめています。 ただ、このように対戦を楽しめているのはたまたまだったのではと思っています。 メダロットSは土台から対戦を考えていないので、ほころびが散見されます。

 

メダロットSの競技性を向上させる提言

先に申した通り、メダロットSはかつて高かった競技性を継承できていません。 今後、メダロットSでなくて良いので、競技性が高い新作でもって、ずっとゲームをし続けてくれる強固なファンを形成していくことを期待したいです。

なお、メダロットSにあってもいくらか手を入れることで競技性を上げることができます。 ある限定されたオンラインエキシビジョンのレギュレーションでのみ、こういった試みをしてもいいのではと思います。 これらの提言は、競技性を高めること、つまり技能を正しく競えるようにすることを目的としており、現実性や採算性、課金・ガチャ運に対する公平性などは度外視です。 ただ、おおよそメダロット9のシステムですので、実績と支持はあるでしょう。

  • 頭部で受ける仕様を直す
    • 機械的ランダム要素(運)が勝敗に反映されないこと、または反映されずらいことに寄与する。
    • 残装甲の高いパーツで受けるか、ディフェンスパーツセレクトをできるようにする。
    • この問題は競技を破壊しかねない問題のため、最高優先に対策すべきものである。
  • 相手ステータスを見れなくする
    • パーツ知識、強化内容の読みといった技能を問う競技性に寄与する。
    • たとえばパーツ名と装甲、メダロッターといった、対峙したときに見えそうな情報に限定する。
    • カラーチップ・スキンで視認性を悪くすることも戦術化する。
  • 頭部被ダメでリーダー判定する仕様を追加する
    • 頭部被弾しないよう立ち回ることも戦術化される。
  • 攻撃選択時に命中率を明記する
    • 命中率を見えるようにすることで機械的ランダム要素(運)をただしく評価できるようにし、そのコントロール技術を競えるようにする。
    • ディフェンスパーツセレクトがある場合は、防御選択時に回避率を明記する。
    • 貫通先パーツも、率の表示か頭部貫通に固定する(メダロット9)などで機械的ランダム要素(運)をただしく評価できるようにする。
  • 脚部充冷を無効化する
    • パーツスペック(脚部充冷)が勝敗に寄与しすぎているため。
    • 無効化手段として、脚部充冷をゼロで均一化するなどが考えられる。
  • パーツはランク5、Lv90で均一にする
    • フラットマッチの継承でよい。
  • メダロッターをLv20で均一にする
    • 人的ランダム要素(取ることのできる戦術)の公平化に寄与する。
    • 同一人物を同時に使用できないことは、一定の縛りとして機能していて問題ではない。
  • 強化チップやパーツチューンナップは、無反映か消費系アイテム無しに自由に調整可能にする
    • 人的ランダム要素(取ることのできる戦術)の公平化に寄与する。
    • メダロット9のメダリアは非常に完成されたシステムであったため、強化チップやパーツチューンナップの代わりにしても良い。
    • 補記: ただメダロット9仕様のメダリアをロボトルの基幹システムから共通化することは、カジュアル路線との両立目線で難しいと考えています。 またメダリアは創意工夫性を広げますが、戦術においてのパーツ依存度が下がるため、パーツを売りたいメダロットSのエコシステムには合いません。
  • メダルスキルレベルも、スキルレベル均一か、消費系アイテム無しに自由に調整可能にする
    • 人的ランダム要素(取ることのできる戦術)の公平化に寄与する。
  • パーツ、メダル、メダロッターを所有していなくても利用可能にする
    • 人的ランダム要素(取ることのできる戦術)の公平化に寄与する。
  • パーツを重複して利用可能にする
    • パーツ重複禁止は人的ランダム要素(取ることのできる戦術)を狭めるため。
  • (後日追加)スキルレベルのパーツ性能向上度合いを鈍化させる
    • 人的ランダム要素(使える戦術)が広がることに貢献します。
    •  フラットマッチでは均一化によって解消されていますが、充冷速度まばさん)、ダメージ袴矢さん)の計算式によると、どちらも正比例で効果向上に寄与しています。 向上が鈍化するようにしておかないと攻撃・支援とも特化機が強くなりすぎるので、これも正されたいものです。 つまり、スキルレベル50で万能型を作った場合には、特化機(スキルレベル99)の67%の性能しか出せず、対戦環境では使えません。 67%は(50+50) / (99+50)で求めています。
    • 裏付けは取れていませんが、メダロット9ではある程度のスキルレベルがあれば出せるダメージは同じになるそうです。 充冷速度はあまりよく知りません。 もしかしたら正比例かもしれません。
  • (後日追加)得意でないスキルレベルも伸ばせるようにする
    • 人的ランダム要素(使える戦術)が広がることに貢献します。
    • 苦手なスキルを強化できない問題もあります。 これは構成の自由度を下げます。 また一部の過去作メダチェンジ機のスキルを変更させられてしまう問題も起こしています。 たとえばパーティクルはしかける技がなくされましたし、ハイカラメイツはたすける技がなくされました。 不出来な基幹システムのために過去メダロットの行動が変えられてしまう問題は、続くブランド問題でも上げます。
  • (後日追加)脚部相性を増やす
    • 人的ランダム要素(使える戦術)が広がることに貢献します。
    • 脚部相性が3つしかないのも問題です。 メダチェンジができるシステムであることから、1試合に2種の脚部タイプを使う可能性がありますが、適当なメダルを選ぶ余地がない/あっても性格・MFが魅力的でない問題が起きています。 得意苦手を作るのは良いのですが、9のように5種を得意にするか、メダリアで苦手を克服できるようにするかが必要でしょう。
  • 設置物を攻撃で排除できるようにする
    • 腕ディスターバンスやファーストエイドが戦術間の均衡を崩しているため。
  • チャージ時間は機体によらず一定とし、チャージ中は回避不能にする
    • 特にフラットマッチにおいて、リスクのないメダフォース戦術が強い戦術であるため。
  • そのほか、パーツスペック、技・脚部特性効果の見直し
    • イリュージョンの発動条件
      • 戦術間の均衡を崩しているため、メダロット9仕様に変える。
    • コンフュージョンの技効果差し替え
      • 機械的ランダム要素を排除するため無くす。
  • そのほか、メダロット9のシステム移植
    • リーダー効果
      • 同じパーティ同士の再戦でも、リーダーを変えるだけで戦術・立ち振る舞いを変えられる。
    • サブスキル
      • 全体攻撃、乱撃攻撃、がむしゃら、ねらいうちをサブスキル化する。
      • アンチエア、アンチシーもサブスキル化して良い。
    • コンボ
      • 人的ランダム要素(取ることのできる戦術)の拡大に寄与する。
    • CF
    • トランスパーツ
      • 人的ランダム要素(取ることのできる戦術)の拡大に寄与する。

 

まとめ

ロボトルの競技性を比較可能なよう定義し、メダロットS、メダロット9、メダロット2の間で比較し、競技性が最も高いものはメダロット9と導きました。 一方で現在のところ、商業的成功のために競技性の高さが必須であるとは言えません。 メダロットSではそのエコシステムのために競技性を上げることが困難なことを理解する一方で、今後発売されるであろうコンシューマ版メダロットでは、メダロット9で迎えたような競技性の高い作品となることを期待します。 シナリオクリアが易しくあるべきなのはもちろん、対戦に望むための育成も易しくあることも期待します。

最後に、メダロットSリリース2.5周年記念配信ではハードネステンやパーティクルをデザインされたTAGROさんのインタビューが実現しました。 かつての記念配信のことも考えると、キャラクタデザインちゅがさんTAGROさん)やシナリオ平野佳菜さん)の話を聞くことは叶ったので、今後、一線を退いていらっしゃるでしょうが、3vs3ロボトルシステムの基礎を作った白玉さん(初代メダロットなど)や、対戦・競技性を重視した斎藤さん(メダロット8,9など)、そしてメダロットSのロボトルシステムをデザインされた方の話を伺うことのできる場ができることを願ってやみません。

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